アサヒビールのチャレンジングな社風はどのように作られているのか、
どのように商品開発をしているのかを分析します。
会社概要
会社名 : アサヒビール
代表取締役社長 : 塩澤 賢一(しおざわ けんいち)
資本金 : 20,000百万円
分析
アサヒといえば『アサヒスーパードライ』が代表的な商品です。
この商品の誕生当時のビール業界を振り返り、どのようにヒット商品を生み出したのかを分析します。
ビール市場
ビールは熱処理をしたものと非加熱処理の生ビールの2つのカテゴリーに分類されます。
また、1975年頃から消費者の嗜好や行動様式の変化によって「生化」や「缶化」が進行していた。
従来のラガーや当時の生ビールでは物足りない「ドライ」を求める消費者ニーズが表れていた。
競合
スーパードライの出現前は業界全体が「味」とは離れた、
パッケージや容器などの表層的なところで競争が繰り広げられていた。
他社が何かを仕掛けたら対応するといった受動的なものであったため、
同化してしまい、当時のアサヒビールもその会社の1つだった。
アサヒビール
少しずつシェアを落とし続け、1985年には9.6%にまで落ち込んでいた。
製造コストを抑えるために原材料の質を落とし、店頭には日付の古いビールが並んでいた。
この頃のアサヒビールは他のメーカーと同じことをするという意味で
市場(顧客)を表層的に捉え消費者の「生化」「缶化」という変化を見落としていた。
経営資源に余裕のない状況では原材料に妥協し、美味しいビールを提供できていなかった。
この悪循環を断ち切るためにチャレンジしたのが「最高の味」を提供することだった。
これが有名な「フレッシュ・ローテション」革命である。
従来のラガーや生ビールに満足できない消費者ニーズに正面から応えたのがアサヒスーパードライである。
そしてスーパードライの勢いに慌てた他社は◯◯ドライという商品を出した。
しかし、消費者の真剣に向き合いニーズに応えることができたのはアサヒだけだった。
他社は資金を溶かしただけでなく、主力ビールの売り上げをも落としてしまったのである。
学べること
このアサヒスーパードライから学べることは以下である
消費者こそが戦略であり、本質を捉えることが重要
成熟市場からでも顧客の価値を考えることで道は切り開けるということである。
戦略
アサヒビールはスーパードライの戦略の基本を『美味しい生ビールを提供する』に置いている。
そのためにすることは以下の3つ
- いいものを作る
- いいものを伝える
- いいものを維持する
いいものを作るために消費者のニーズにフォーカスし、ドライな生ビールを開発したことである。
また、原材料にこだわり、高品質なビールを生産することであった。
そしていいものを伝えるために営業利益を全て注ぎ込むほどのTVCMや広告を展開した。
いいものを維持するために「フレッシュ・ローテーション」の徹底をし、
8日以内に店頭に届け、3ヶ月経ったビールは店頭に置かないようにしたのである。
このようにアサヒビールは消費者に美味しいビールを提供するために必要な要素を徹底したのである。
これによって1985年に9.6%だったシェアは10年間で約3倍になったのである。
生ジョッキ缶の分析
アサヒビールは2021年4月6日に「生ジョッキ缶」をコンビニ限定で販売したが、2日で出荷を一時停止にすると発表した。
これは販売が好調で商品供給が追いつかなかったためである。
これほどまでに生ジョッキ缶が売れた理由を分析する。
主な要因は以下と考える
- コロナによる家飲み需要
- 缶ビールでは泡は楽しめないという固定概念の破壊
- SNSによる拡散
コロナによって巣篭もり傾向になり、家飲みにシフトしたことが大きい。
2020年の第4四半期では外食の支出がおよそ-18.0%(前年比)になり、酒類の支出が約+16.8%(前年比)の変化が見られた。
[一世帯あたりの支出(二人以上の世帯):総務省]
これによる家飲みの市場規模成長が見られたと考えられる。
スーパードライと同様、消費者が何を求めているのかにフォーカスし、
既成概念を覆す姿勢がアサヒビールならではである。
まとめ
成熟市場においても顧客を見失うことなく真剣に向き合えば
本当に求めているものが理解することができ、こだわりを徹底して
提供することでまだまだ可能性が隠れているという例をアサヒビールから学べました。
売れ筋商品には人を惹きつける何かがあり、それを発見するまでに莫大な資本や努力が積み重なっているのですね。
今後も流行っているものの分析も続けていきます。
ちなみに、生ジョッキ缶は熱に反応して泡が出るため、手で軽く握ったり、
数秒間常温をかけると泡立が良くなるようです。お試しあれ。