【書評】DXとは何か:DXの思考法

最近よく耳にするDX(デジタルトランスフォーメーション)

多くの企業はとりあえずデータ集めてデジタル化することに注力しているように見えます。

本書はそのような表層的な考えを一掃する、DXの本質が記されており、

DXに取り組む経営者が、自分なりの道筋を判断する地図のようなものを描くサポートする本です。

著者の西山圭太さんはDXをどのように捉えているのかを以下で解説していきます。

結論

DXの本質とは垣根を超えてパターンを見出す能力のことであり、

IX(インダストリアル・トランスフォーメーション)時代のロジック・デジタル化のロジックを個人と組織の身体に刻み込むことである。

この時点で「DX=ただのデジタル化」ではないということが分かりますが、

以下で深掘りしていきます。

DXとは

そもそもDXとは何でしょうか。

「トランスフォーメーション」という英語は「かたちが跡形もなくすっかり変わる」

つまり、「決定的な変化を起こす」ということを意味している言葉である。

DXを導入する目的

なぜDXを導入するのか。それは

デジタルの世界を構成するエコシステムの一部になることでIX時代の地図自体を書き換えることができるからである。

カレー粉の話

本書で説明されていたカレー粉の例が分かりやすい。

カレーを作るとき(スパイスからは別にして)、カレー粉があればスパイスのことを考えない。

カレー粉がまとめてスパイスの役割を果たしてくれており、

消費者にとってそれは考える必要のないものであり、カレー作りを高速化する。

インテルの話

小型電子計算機を開発していたビジコンという会社が、小型化計算機の生産のためにインテル社に訪れた。

しかし複雑さゆえに全てを生産することが不可能と判断した。

そこでインテルは一部の機能をソフトウェアに移し、汎用チップに置き換えることに成功した。

汎用チップにすることで計算機以外の機器にも対応できるという発想のもとであり、

実際にインテル社は汎用チップで多くの企業から権利収入を得ることができたのである。


この二つの例のように、物事を抽象化してとらえ、具体化してみるという考えがデジタル化の本質である。

「この手を打てば何でも処理・解決できるのではないか」という発想である。

これがDXを取り入れる目的になる。

レイヤー化

先程のカレー粉はまさに抽象化であり、作業を高速化することを実現している。

抽象化しようとするとレイヤーからなる重箱のような構造ができる。

カレー粉を使うカレールーに相当するレイヤー、カレールーを使ったカレーうどんのレイヤーという具合に

レイヤーをどんどん積み重ねていくことで人間が説いてほしい実課題との距離を埋めることができる。

これをデジタルで表現している例としてアリババをあげる。

アリババは多くの事業をしており、中でもタオバオでは出店者のデータが繋がるような環境が必要になる。

そこでAPIというソフトウェア同士が情報をやりとりするために定められた仕様書を作った。

APIを利用したアプリケーションがレイヤーとして増え、

タオバオはどんどん魅力的になり参加者が増えるという好循環が生まれた。

つまり、デジタル化には2つの軸がある。

ゼロイチで表現できるコンピュータの基本的な機能と人間の実課題とを埋めるためのもの。

つまりサービス提供する側から見た軸

もう一つはそれに人がどう関わるのかという軸である。

ユーザー軸あるいはUI-UX軸と言える。

この隙間を埋めるためにレイヤーを積み重ねることが重要になる。

本棚を作る

DXで経営者が取り組むべきことは「本屋の本棚を見て」「そこにない本を探す」ということを本書で主張している。

本屋の本棚とは、先に外部環境の方を棚卸しようということである。

つまり現在において、そのソフトウェアやデータセットの多くが既にサービスやプロダクトになっているのである。

それを利用した方が早く、誤りが少ないはずだ。

以下の図は右側にある「本屋の本棚にある本」を利用し、探しても見つからず、

ビジネスで必要なものは開発・カスタマイズから着手することになるので、

マップの左側にくるということを表している。

IX世代に必要な発想のテスト

最後に、DXを実行する上で必要な考えを持つためのテストがある。


  • 課題から考えるーーー解決策に囚われない
    • 課題が与えられたときに、それは本来的に何を解決することを指しているのかを考える。
  • 抽象化するーーー具体に囚われない
    • 「ややこしさ」を細分化するのではなく、抽象化して考える。
  • パターンを探すーーールールや分野に囚われない
    • 「ややこしい」ものを捉え、働きかけるために武器(パターン)を多く持つ。

抽象と具体を行き来し、パターンで物事を捉える。

前者は次元を跨いで考え、後者は分野を跨いで考える手立てである。

まとめ

本書はDXをただのデジタル化ではなく、さらにその先、本質を記していると感じる。

最後のテストの考え方を普段から意識することで小手先に惑わされない思考を得ることができると確信しました。

DXについて勉強したい、興味がある人はこの本から読むといいと思うのでチェックしてみてください。