今回はウォルター・ブロック著の『不道徳な経済学』の書評です。
本書ではさまざまな例が出てきますが、今回はその中から抜粋して紹介します。
概要
この本では転売屋や売春、麻薬密売人、闇金融などの、社会で悪いイメージを持つ人が多い職業に対して、実はその人たちは経済的利益をもたらしているんだよ。ということを気づかせてくれる本です。
それではいくつかの例を抜粋します。
ダフ屋
ダフ屋とは転売屋のような職業のことです。人気チケットを高額な値段で販売することで利益を得ている人です。
そもそもダフ屋が存在するための前提条件として、以下の3つが挙げられます。
- 固定されて変更不能な供給量
- 商品に定価が示されていること
- 市場価格よりも安めに値段を決めていること
この条件が成立するとダフ屋(転売屋)が存在可能となるのです。
2においては筆者は株式市場で株を売買するときのように、
マーケットが決めた価格で売買できない点として、
値段が決まっている方がみんなが便利だと考えているからであると言います。
(予算や収益の目安が立てやすい)
転売屋は消費者の欲求によって成り立っているのです。
では、ダフ屋は完全に悪者なのでしょうか?
ここで筆者は、実はダフ屋は悪者ではなく多くの人の役に立っていると言います。
それはダフ屋は下層階級や中産階級を助けているからです。
職が無い、あるいは低所得者層の人たちには、列に並ぶ時間があり、
働いたとしても給与水準が低いため、休んでも一般の人より影響が少ないのです。
このような面でダフ屋は雇用の選択肢がない人にビジネスチャンスを与えていると言えます。
そして中産階級の人々にとっては気軽に休むことが難しく、
自分の代わりに並んで買ってくれたと考えれば、
チケットの購買代行という形で受け止めることができます。
もちろん金持ちは少しの値上げなど気にしないのでここでの損失はありません。
以上のことから筆者はダフ屋は一概に悪者と言えず、需要と供給の法則によって価格を調整することで市場経済を活性化させていると言います。
飢饉で大儲けする悪徳商人
人類の歴史で飢饉が起こるたびに買い占め屋への批判が起こります。
ここでも筆者は高騰した食糧を売った商人は重要な役割をすると言います。
それは価格の均衡化です。
豊作で食糧の価格が平年より安いときに商人は食糧を買い溜めしようと考え、
その結果市場に出回る食糧は減り、価格は上昇する。
そして不作の年が訪れると蓄えられた食糧は市場に放出され価格は下落する。
もちろん商人は買った値段よりも高く売るため不作の年の価格は高騰する。
しかし、その商人がいなかった場合ほどには高騰しない。
このように、安いときに買って値段を上げ、高いときに売って値段を下げるという
商人は悪徳ではなく、むしろ社会にとって価値のあることをしているのです。
つまり(悪徳)商人がいなかったらもっと酷い事になっていると考えられます。
まとめ
『不道徳な経済学』は抽象的な視点を与えてくれたように感じます。
それは経済全体として視る、そして未来のこと考えることができるからです。
確かに買い溜めや転売屋はその瞬間の一部の人に迷惑をかけているかもしれません。
しかし俯瞰してみると一概に悪いと言えないと思います。
個人的な経験で言うと、ポケモンや遊戯王などのカードゲームが良い例です。
10年以上前の遊戯王カードや未開封BOXが現在数十万円以上することを考えると、
その当時に買って現在に至るまで大事に保存していたから、”今”貴重という価値を感じることができる。
十数年後の今にとって、貴重となったのは当時購入して保存してくれた人のおかげだなと感じるのです。
その人がいなかったらそのBOXやカードは現在に存在していないわけで。
と、私の経験と擦り合わせて考えてみました。
現在だと、高騰しているポケモンカードのパックがあり、なかなか購入できないようです。
今買い溜めしている人のおかげで何年後かに貴重を実感できる日が来るかもしれませんね。
興味を持ったよって人は是非読んでみてください。スラスラ読めます。