今回は宮口幸治さんの著書『ケーキの切れない非行少年たち』から、人が変わるきっかけについて考えます。
この本では児童精神科医である筆者が少年院で出会った、
「ケーキを等分に切ることすらできない少年たち」との出来事を細かく記しています。
非常に読みやすくイメージしやすい本です。
非行少年たち
少年院にいる少年たちは実際は大人しい子も多く、簡単な計算や漢字が読めない、
簡単な図形を写せない、短い文章すら復唱できないといった少年が多かった。
そのせいで勉強が苦手になり、対人関係で失敗していじめに遭ったりしており、それが非行の原因になっていた。
非行少年たちには後先のことを考える”実行機能”が弱く、一般的にみて考えられない方法を取るのです。
例えば、一週間後に10万円を用意してください、というお題を与えると、
「借りる」と一緒に「盗む」が普通に出てきます。
ここにも後先のことを考える力の弱さが出ているのです。
少年たちに共通する特徴5+1つ
- 認知機能の弱さ:見たり聞いたり想像する力が弱い
- 感情統制の弱さ:感情をコントロールするのが苦手。すぐキレる。
- 融通の利かなさ:何でも思いつきでやってしまう。予想外のことに弱い
- 不適切な自己評価:自分の問題点が分からない。自信がありすぎる、なさすぎる
- 対人スキルの乏しさ:人とのコミュニケーションが苦手
+1.身体的不器用さ:力加減ができない、身体の使い方が不器用
1. 認知機能の弱さ
認知機能が弱いと、その人が努力して手に入れたものの背景を考えずに簡単に人のものを盗むようになる、といったことが起こります。
また、客観的に見ると普通のことなのに「あいつが睨んできた」などの勘違いが生まれやすくなり、トラブルの原因になります。
2. 感情統制の弱さ
感情統制の弱さは、自分の心の中で何が起きているのかが理解できず、モヤモヤがストレスに変わります。
そのストレスが溜まり発散方法として暴力事件や性加害などの犯罪を起こすのです。
怒りは冷静な思考の妨げになるため、我々はその子の”怒りの背景”を知らなければなりません。
3. 融通の利かなさ
融通が効かないことは他の方法がないかを探すことをせず、これで間違いがないはず、と決めつけてしまいます。
10万円用意するには?に対して強盗・騙しとる、などしか思い浮かばないということになります。
4. 不適切な自己評価
自己評価を適切に行えなければ、ひどい犯罪を行っても自分は優しい人間だ、と言ったりするのです。
自己評価は人との生活を通して他者とのコミュニケーションを行う中で、相手の反応を見ながら
自己にフィードバックするという作業が必要なのです。
ここで認知機能が弱いと相手の反応を正しく読み取ることができず、負の連鎖になります。
5. 対人スキルの乏しさ
対人スキルの乏しさは先にあげた特徴から来ています。
聞く力が弱いから相手が何を言っているのか分からない、
想像力がないから相手の立場が想像できず不快にさせてしまう、などです。
そして周りと上手くコミュニケーションが取れないために、何かふざけたことをして、
「お前面白いなあ」などを言ってもらうと、そのふざけ行為は強化され、
次第に犯罪に繋がりそこに自分の価値を見出すようになるのです。
+1. 身体的不器用さ
身体的不器用さは強調運動が必要とされる日常生活上の身体活動の獲得や遂行に困難さを生じます。
靴紐が結べない、アルバイトで何度もお皿を割ってしまう
さらには力加減ができずじゃれあったつもりが大怪我をさせてしまい逮捕された、などがあります。
では我々はどうすれば良いか
少年たちや知的障がい者は本来保護される存在ですが、成功体験が少ないため自信を持ちにくいのです。
そこで我々が”褒める・話を聞いてあげる”などはその場凌ぎでしかなくて、
根本的解決策でなく問題を先送りにしているだけになってしまいます。
ではどうするべきか。
少年院で変わり始めた少年たちの特徴から分かることがあります。
それは「自己への気づき」と「自己評価の向上」です。
家族のありがた味がわかったとき、将来の目標が決まったとき、人と話す自信がついた時などです。
自分が変わるための動機付けには自分に注意を向け、見つめ直すことが必要です。
少年たちが変わろうと思ったきっかけに共通しているのも、
集団生活の様々な人との関係性の中で”自己への気づきがあること”、
そして様々な体験や教育を受ける中で、”自己評価が向上すること”の二つです。
特に自己への気づきは少年自らが「気づきのスイッチ」を入れなければならないので、
我々としては様々な気づきの可能性がある場を提供し、スイッチを入れる機会に触れさせることが大切です。
“人に教えてみたい・人から頼りにされてみたい・人から認められたい”という気持ちはみんなが持っています。
それが自己評価の向上に繋がっていくのです。
まとめ
非行少年を例に出して彼らが犯罪に手を染めてしまう様々な要因が分かったが、
これは一般にも当てはまると感じました。
自己肯定感がなくなると虚無になるし、やはり人から必要とされる存在でありたいと考えてしまいます。
承認欲求について少し距離を置いていたけれど、「その欲求は人が人らしく生きるために必要な要素である」
と考えさせられる内容でした。
“自己への気づき”と”自己評価の向上”
この二つを意識して自分のモチベーション向上させ、人の手助けをしようと思います。
皆さんも周囲に落ち込んでいる人がいればこの2点を意識して対応してあげてください。
きっと日本社会が良くなるし、世界の明るさが変わるのではないかと考えています。
ぜひ一度読んでみてください。